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お腹の漢方

下痢によい漢方・便秘に良い漢方・そのほか

お腹というのは、簡単にいえば消化吸収をするところです。
さらに不要物を排泄する働きもあります。
漢方では、五臓(→「当院の治療方針」をご覧ください)のうち、とくに「脾」(おなか)を重視します。 エネルギー産生のもとですから、「脾」がダウンすると、全身のエネルギーが枯渇してしまいます。

われわれが「おなか」の失調を感じるとき、治療を緊急に希うような症状としては、嘔吐・嘔気、腹痛、下痢、便秘のいずれかになるでしょう。
慢性的なものには、腹がゴロゴロ鳴るとか、なんとなく気持ちが悪い、食が進まない、食が細い、太れない、というようなものもあります。
医学的には当然これだけでは済まないのですが、すべて網羅することはできませんので、遭遇する頻度の高いものに限ってお話をします。

下痢

下痢を来たす現代の病気はたくさんあります。
ここでは、上で書いたように高頻度のもの、漢方治療で何とかなるものについてお話します。

五苓散(ごれいさん)

誰に聞いたか忘れましたが、昔の旅人は「五苓散」と「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」を携帯していたそうです。
後者は、現在でも足のこむらがえりによく用いられます。現代医薬品でそういう作用をもつものがないのですね。
昔の旅は、ほとんどが徒歩でしたから、足はよく攣ったでしょう。
この芍薬甘草湯は腹痛にもよいので、痛み止めとしても用いられます。

さて、五苓散のお話でした。
五苓散は、猪苓(ちょれい)・沢瀉(たくしゃ)・茯苓(ぶくりょう)・白朮(びゃくじゅつ)・桂枝(けいし)からできています。
5つの成分は、いずれも体内の水の流れに関与します。
猪苓、沢瀉は、”どちらかといえば”尿を出す薬です。利尿薬としての作用があります。
あとの3つは、体内の水の不均等分布を是正するような薬です。
例えば、胃腸や手足に水がだぶついている場合、これを血液中に引き込みます。
この水は結果的に腎臓へと運んで尿として出ていくようになるわけです。
こうして、下痢や胃のむかつき、吐き気、手足のむくみ(浮腫)などが改善されます。
頭の表面の血管周囲の水をもさばくのでしょうか、片頭痛にも効果があります。
その作用の速さから、「五苓散は、下痢として出ていく水を、膀胱のほうへ向けて、尿として出す」と昔の人は考えたようですが、腸から膀胱へ水が直接ショートカットしてくるわけではありません。

胃苓湯(いれいとう)

これは、上の五苓散に、別の漢方薬「平胃散(へいいさん)」を加えたものです。
胃への作用がより強くなります。

猪苓湯(ちょれいとう)

五苓散に似ていますが、五苓散の白朮・桂枝を阿膠(あきょう)・滑石(かっせき)に変えたものです。
阿膠・滑石は熱を取り炎症を抑える働きがあります。
もともと尿道炎や膀胱炎によく用いられる漢方薬ですが、下痢にも効きます。

五苓散との使い分けは、五苓散が「冷たいものでお腹を壊した」ような、温めたほうがよいような場合に使います。
桂枝は温める作用があるのです。
一方、猪苓湯は、冷ましたほうがよいような、炎症性の下痢によいことになります。

普通の下痢止めは、効きすぎて、本来排除すべき菌やウイルスを腸内に閉じ込めてしまいますので、感染性の下痢には使えませんから、そういう場合などに漢方薬がよいでしょう。
ただし猪苓湯が効きすぎる方には、普通の下痢止めと同じことになりますから、使えません。

啓脾湯(けいひとう)

私はこれをよく使います。
慢性の下痢で、感染症など、特に抗菌薬などで治療しなければならないようなもの以外に使います。
食が細くて太れない、やせすぎていて力が出ない、ような方に良いでしょう。

啓脾湯には、人参(にんじん)・白朮・茯苓・陳皮(ちんぴ)・山楂子(さんざし)・甘草(かんぞう)・沢瀉・蓮肉(れんにく)・山薬(さんやく)の9つの生薬が含まれています。
いずれも穏やかに作用する薬です。
陳皮・山楂子は胃もたれによいですね。
沢瀉は五苓散のところに出てきました。

啓脾湯の真骨頂は、人参・白朮・茯苓・甘草(これだけで四君子湯(しくんしとう)の原型:元気、とくにお腹(これが脾胃です)の力をつける)に、蓮肉・山薬という「慢性下痢止め」が入っているところでにあります。
下痢止めというよりは、消化不良症のかたに良いと思います。

真武湯(しんぶとう)

これは「温陽利水」の処方です。
附子(ぶし)で温め、茯苓・白朮で水を巡らします。ほかに生姜・芍薬が入っています。
冷えて下痢になる方に、まず考慮する漢方薬です。

人参湯(にんじんとう)

人参・乾姜・白朮・甘草からなり、乾姜でおなかを強力に温めるのが特徴です。
人参は気を補う作用がありますが、ここでは主に胃の痞えを改善する作用が期待されているようです。

便秘

便秘に使われる漢方薬は、大きく分けて大黄(だいおう)を含むものと含まないもの、があります。
それぞれ例を挙げてみましょう(もちろんほかにもいくつかあります)。

【大黄を含むもの】

大黄は、腸を刺激して便を出させる瀉下薬のひとつで、漢方薬で便秘といえば、大黄が浮かぶくらいです。
他にも大黄は、血行を改善する作用、いらいらなどの精神不安定を解除する作用があり、こちらの目的で用いるのがむしろ漢方らしいものです。

麻子仁丸(ましにんがん)

大黄・厚朴(こうぼく)・枳実(きじつ)・芍薬・麻子仁(ましにん)・杏仁(きょうにん)の6つからなります。
効果はマイルドですが、しかししっかり便を出させる薬です。

ほかにも大黄製剤はいくつかありますが、省略します。

【大黄を含まないもの】

便を押し出す力が弱いかたも便秘になりやすいものです。

大建中湯(だいけんちゅうとう)

乾姜(かんきょう)・山椒(さんしょう)・人参・膠飴(こうい)からなります。
「腸閉塞の治療薬」として有名になった大建中湯ですが、もともと「金匱要略」に載っていた漢方薬で、腸の動きが悪く、薄い腹壁からむくむくと動く腸が透けて見えるようなときに使うものです。
腹壁が薄いので、腹筋も薄くて弱いため、排便時にいきんでも便を押し出すことができないわけです。